研究分担者 |
堀川 徹 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60108967)
梅村 坦 中央大学, 総合政策学部, 教授 (90124289)
濱田 正美 神戸大学, 文学部, 教授 (30109061)
宇山 智彦 北海道大学, スラブ研究センター, 助教授 (40281852)
小松 久男 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30138622)
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研究概要 |
独立後の中央アジアでは文化・宗教面で新規のアスペクトが現出してきた。本研究は,このような現象の内実と背景に注目し,前近代から現在に至る歴史的な社会・文化の変容過程を,共属意識とイスラームの関係性を軸に検討することを目的としている。本年度は,現状の様態に関する総体的な把握を進めるとともに,歴史的状況を解明するための根本的な材料を新たに開拓し,集積するための基礎作業に従事した。具体的には以下の通り。 (1)ウズベキスタン,カザフスタン,アゼルバイジャンにおいてモスク・聖者廟等の宗教施設,宗教政策担当官庁,宗教教育機関などを訪問し,ソ連邦末期から復興してきたイスラームの現状を包括的に調査した。また,イスラームを国家統合の支柱としてきたウズベキスタン政府が,最近宗教へのコントロールを強化している実情が明らかになった。 (2)個別の事例調査として,カザフスタンにおけるウイグルとドゥンガンのコミュニティに関する調査を実施した。近年,再認識された民族文化の強調や民族意識の高揚,イスラームの復興といった現象が顕著な形で表面化している。これは,ソ連崩壊後の自由化の流れとともに,カザフ人の政治的優越性が増しつつある独立後のカザフスタン国家の中でエスニック・マイノリティが置かれている位置・境遇をも反映している。 (3)前近代およびロシア帝国統治期の中央アジアのムスリム社会の様相を文書史料の利用を通じて解明する研究に突破口を開きつつある。ウズベキスタンのイチャンカラ博物館所蔵ヒヴァ・ハン国文書の本格的検討に当たるとともに,ウズベキスタン国立中央古文書館のコーカンド・ハン国文書にもアクセスを開始した。また,カザフスタン国立中央古文書館では,ロシア帝国統治期のウイグル社会の状況に関する文書史料を調査した。 今後は,文書研究の発展,ソ連期の状況に関する聞き取り調査の実施を予定している。
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