研究課題/領域番号 |
11691024
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹沢 尚一郎 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (10183063)
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研究分担者 |
坂井 信三 南山大学, 文学部, 教授 (00140012)
吉村 淳 九州大学, 農学研究院, 教授 (00182816)
中橋 孝博 九州大学, 比較社会文化, 研究院・教授 (20108723)
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キーワード | 西アフリカ / 農業起源 / グラベリマ稲 / アフリカ史 / 考古学 / 社会人類学 / フォニオ / 新石器文化 |
研究概要 |
平成12年度は、平成11年度に引きつづきマリ共和国北部のメマ地区で考古学発掘をおこなった。4遺跡、7サイトでの発掘調査により、これまで研究が不十分であったマリおよび西アフリカでの農業起源に関して、おおよその理解が得られた。 KS遺跡は標高5-6mの丘の上に位置しており、そこから出土したのは、新石器時代の土器と石器、骨器、人骨、動物骨(羊/山羊)、魚骨であった。一方、それに隣接するKSE遺跡からは、新石器時代の土器、人骨、動物骨(牛?)、魚骨のほかに、すべての層から西アフリカ原産の穀物であるフォニオが出土した(鉄・スラグともなし)。また、両遺跡の北に位置するK遺跡からは、すべての層においてスラグが出土した。 年代測定はいまだ完了していないが、以上のことから、最初人びとはKS遺跡のある丘の上に居住し、新石器を用い、漁を中心に若干の牧畜をおこなっていたが、乾燥化にともない低地に降りて、フォニオの耕作を開始したと推測される。マリ共和国のこの地域では鉄器時代はBC5世紀前後に開始されているので、おそらくBC6-10世紀のことであろう。これまで西アフリカにおける発掘調査によりフォニオが出土したことはなく、しかもこのBC6-10世紀というのは、これまで西アフリカで発見された穀物のうち2ないし3番目に古いものである。また、農業起源に関しても、乾燥化にともなう人口圧力による農業の開始というテーゼの根拠となりうる事例として注目される。 この土地は現在では乾燥化が進んでいるが、季節的に沼となる低地では野生種のグラベリマ稲およびフォニオが確認された。なぜフォニオだけが遺跡から出土し、グラベリマ稲が出土しないかについては今のところ解答を得ていないため、平成13年度もこの地で発掘調査を継続する予定である。
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