研究概要 |
本調査研究は,東南アジアの大陸部東北端の国カンボジアと東アジアの色どりの濃い中国文化圏最南端の国ヴェトナムの接点に古来住んできたカンボジア系のヴェトナム少数民族クメール・クロムの世界でも初めての総合調査研究であった。第2年度の平成12年は稀に見る大洪水などに妨げられて困難もあったが、研究者それぞれが自のテーマに従ってそれぞれ創意工夫をこらし、非常な成果を上げた。2年間にわたる調査の出発的となったチャビン省ニーチュン村へは今年度は入ることができなかったが、三上道光(言語学)はホーチミン市にあるクメール・クロムの諸寺でその村の方言を話す人を見つけ、それを中心に数ヵ所の方言を収集した。ペン・セタリン(民話・研究協力者)も独自の工夫で果敢に各地方の民話やラーマヤーナの口伝を集めることに成功し,クメール・クロムの民話の成立がカンボジアのそれよりも古いのではないかとの仮説の端緒をつかんだ。大橋久利(政治)の調査環境が今年度非常に厳しくなっていることから、政治と平行してカンボジア上座仏教のホーチミン市への最近の驚くべき伝播についての調査に力を入れた。萩原修子(クメール・クロムの仏教),中西裕二(文化人類),天川直子(クメール・クロムの農業)もそれぞれ調査を進めた。
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