標記研究の本年度実績の概要は次の通りである。 バングラデシュではこれ以上の砒素被害の拡大を防ぐため、安全な水の供給が急務となっている。バングラデシュでは現在ほとんど利用されていないものの、雨水は砒素を含まない重要な水源となりうる。今年度2・3月に行った調査の打ち合わせと雨期の生活実態の観察のため8月10日から18日にかけてバングラデシュ、ジェソール県を訪れた。 また、雨水を安全にかつ効率的に利用するための伝統的技術を調査/記録するため、実際に雨水が飲料水に使われいる沖縄県島尻郡座間味村および渡名喜村で雨水利用の実態調査を8月29日から9月7日まで行った。この調査では5つの集落の全ての世帯を対象にして調査を行い、雨水集水施設、用途、維持管理方法などについて聞き取り、記録を行った。 バングラデシュでの調査はこれまでアジア砒素ネットワークと共同して調査を行ってきたジェソール県シャムタ村で2月27日から3月26日まで調査を行った。調査目的は大きく分けて4つになり、農業生産、水産、食事、社会組織について、より精度の高い情報を集めることを目指した。農業生産については作物、作付面積など度ともに、水利権などの組織的背景を調べた。また、従来のような客観的情報だけでなく、聞き取りにより数字とか明確な分類で表現できない、たとえば情報の伝わり方や共同作業の構成原理のような、少し「あいまいな」情報を詳しい聞き取りによって調査した。
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