研究概要 |
今年度は、イギリスにおいて最も森林面積の多いスコットランドに絞って調査を実施した。多くの成果を得ることができたが、ここでは以下の4点について指摘する。 (1)フォレストリー・エンタープライズの森林管理においては今日,デザイン計画という考え方と取扱いが重視されており、その内容とプロセスは,現地での実態調査から判断する限り、持続可能な森林経営の各種の基準と指標を十分クリアするものである。 (2)イギリスにおける森林保有,森林管理の特徴のひとつは、エステートと呼ばれるかっての領主や地主系譜に連らなる巨大所有体である。そこでの森林管理は、様々な土地利用と調和させること,動物の生息にも良好な環境であることをコンセプトにしていることから,今後世界が目ざすべきひとつの森林管理の姿を示していることがわかった。 (3)増大しつつある農場林面積の背景にはいくつかの要因があることがわかった。ひとつは、EUレベルで過剰化している農産物対策としての減反政が直接的契機となって農地への育林が進んでいる。他方ではこの植林は、連作障害や草地の周年化による土地の疲弊や変質から水位が上昇しておりその対策ともなっている。さらには風害対策への期待も大きい。また、その一方にはクリスマス・ツリー市場の急成長など林木育成の経営内取込みが多くの希望を与えている。 (4)林業作業を具体的に担っている事業体の環境意識は,一方での生産性向上への対応とともに大きく,これらの次元での自然との係わり方が今日のイギリス林政を支えている。
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