研究分担者 |
白石 昌也 早稲田大学, アジア太平洋研究センター, 教授 (70127330)
栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (30195557)
岩月 純一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80313162)
竹内 郁雄 東京農工大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (90313288)
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研究概要 |
今年度はベトナムのハイフォン市,クアンニン省,タインホア省,中国の広西省・雲南省の国境地帯における調査を通じて以下の成果が得られた。(1)ハイフォン市・クアンニン省いずれも中国との経済関係は重視しているが,基本的には多くの国と経済関係を築き,投資を求めるという姿勢で共通しており,特に経済発展のために中国の方を向いているわけではない。(2)タインホア省では中国の経済的なプレゼンスはほとんどなく,同省は経済発展のためにインフラ整備,観光・サービス業発展,農工業生産の増加に力を入れており、そこでは日本や台湾からの投資がほとんどを占めている(セメント工場,精糖工場)。(3)この4年間両国間の国家間貿易・国境貿易は11億〜14億米ドルで推移し,微増傾向にある。しかし,その内訳には変化があり,モンカイ市では昨年度国境貿易でのベトナムからの輸出増加と中国からの輸入減少が顕著になった。これはベトナムが外国との合弁で生産能力と製品の質を向上させたことが大きな原因となっている。国境地帯の経済発展には,中越双方,例えば東興市とモンカイ市が協調していくことが重要な条件となるが,国家間の壁に阻まれて統合・協調的な政策が提起されていない。特にベトナム側には国境地帯に関する個別的な優遇政策,例えばモンカイ市にのみ適用されるタイプのもの(675号政策)しかなく,国境地帯全般を包括する総合的な政策が提起されていない。中国側から東興・モンカイ地域を「1都市2国家」の自由貿易地帯にするという構想が出てはいるが,構想の段階にとどまっている。このような国境貿易の傾向と国境地帯における両国間で共通した経済政策の欠如は雲南(河口,天保)においても共通する現象である。
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