今年度は、大型国有企業の会社形態への再編問題の新しい展開を中心に調査した。あわせて、会社法の改正および物権法制定の動向についても調査した。 中国の会社法は、すでに施行から5年余りを経たが、現状では当初に期待されたような成果をあげられていない。というのも、主要な大型国有企業は会社組織に転換はしていても、その大半は国有独資会社形態を採用しているため、実質的に国有企業とほとんど違わないのである。また、株式有限会社に転換した場合にも、50%以上の株式を国が保有しており、株式を上場している場合にも、その比率は全体の10%程度にとどまっている例が少なくない。 この状況を打破するため、政府は昨年来、株式会社における株式構成の多元化を進めると同時に、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んできた。今年度はこうした改革の新しい動向がどのように定着していくかについて、全体的な傾向を把握することに努め、多角的なヒアリング調査を実施し(10月)、また中国側研究機関の調査結果についても、調査した。中国側研究機関の調査結果については、中国側共同研究者が調査し、その内容を日本側と共同で分析、検討した(12月〜1月、および2月)。 コーポレート・ガバナンスの強化については、具体的に会社法の改正が検討されており、また物権法の起草にあたっては、株式会社における国有資産の保護に関する法的規制が問題となっている。会社法の改正については来年度中にも実施されると予想されるため、引き続き注視していく。
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