研究課題/領域番号 |
11691071
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
馬居 政幸 静岡大学, 教育学部, 教授 (30126768)
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研究分担者 |
唐木 清志 静岡大学, 教育学部, 助教授 (40273156)
阿部 耕也 静岡大学, 生涯学習教育研究センター, 助教授 (30212541)
外山 知徳 静岡大学, 教育学部, 教授 (40013213)
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キーワード | 日本文化開放 / 文化摩擦 / 青少年文化 / 消費社会 / 情報社会 / 異文化理解 / 世代論 / 大衆文化 |
研究概要 |
1996年〜98年度科学研究費補助金(国際学術研究)「韓国における日本の大衆文化についての調査研究」を踏まえた新3年計画に基づく調査研究の第2年度として、日本文化開放政策後の日本文化浸透状況とその評価の変化を把握するため、ソウル市、大田市、釜山市、光州市の小・中・高生への質問紙調査と教育関係者への聞き取り調査を2000年8月、10、12月、2001年2月に実施。同時に、開放政策も含めた経済危機後の経済社会の変化、とりわけ99年度調査で明らかにした「N世代」に象徴される、急激な情報化への転換に伴う韓国社会の構造変動による青少年の生活様式や人間関係の変化についても、研究者やマスコミ関係者を対象に聞き取り調査を実施し、継続的に資料を収集。また韓國日本文學會の要請で、10月21日、ソウルのサンミョン大学で開催された、「2000年秋期国際学術大会シンポジウム」の基調発表者として「韓国青少年における日本文化の接触状況にみる受容論議の問題性と課題」と題する論考を発表。本調査研究の結果を巡り、韓国を代表する研究者との論議の機会を得て、次の3点の同意を得た。(1)韓国青少年の世界に、日本の同時代の子どもの若者の文化が、リアルタイムで広がる基盤が既に成立していること。(2)そのこと平行して、韓国青少年の日常経験と結びつく行動や文化のレベルでは、日本と日本人に対する肯定的かつ積極的な評価が高まる傾向にあること。(3)その意味で、日本文化開放政策は、個別的な開放方法や内容あるいは進行度の問題とは別に、少なくとも日本文化や日本人への拒否感を和らげる契機になっていること。さらに、我々は5年間にわたる実証データに基づき、1)現実への覚めた認識を、2)日本文化を相対化し、異文化としての位置づけを、3)日本文化の受容ではなく韓国文化の再構築の視点からの論議をとの観点から提言を行い評価され、その内容が韓国KBSラジオの国際放送や韓国中央日報の文化欄で紹介された。文化開放の進行とともに、旧来のステレオタイプな日本批判が減少する一方で、韓国社会の未来像を模索する過程で日本文化の価値を評価する観点から論じることが可能な社会意識が特定層だけではなく、広範な韓国社会のなかに醸成されつつあることが把握できた。ただし、それがどのような深さを持つものかは今後の継続調査が必要である。
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