研究課題/領域番号 |
11691071
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
馬居 政幸 静岡大学, 教育学部, 教授 (30126768)
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研究分担者 |
唐木 清志 静岡大学, 教育学部, 助教授 (40273156)
阿部 耕也 静岡大学, 生涯学習教育研究センター, 助教授 (30212541)
外山 知徳 静岡大学, 教育学部, 教授 (40013213)
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キーワード | 日本文化開放 / 文化摩擦 / 青少年文化 / 消費生活 / 情報社会 / 異文化理解 / 世代論 / 大衆文化 |
研究概要 |
平成8年〜10年度科学研究費補助金(国際学術研究)「韓国における日本の大衆文化についての調査研究」を踏まえた新3年計画に基づく調査研究の最終年度として、日本文化開放決定後の日本文化浸透状況とその評価の変化を把握するため、これまでの調査結果を整理したところ、一貫して上昇していた日本へのプラスイメージが13年に入って反転し、マイナスイメージの増加傾向が明らかになった。前年よりの教科書問題の影響と考えられることから、本年度調査では、ソウル市、大田市、釜山市、光州市での継続調査(小・中・高生への質問紙調査と教育関係者への聞き取り調査)に加えて、4月、8月、9月の3度にわたり、中・高・大学生、教育・マスコミ・出版・交流団体などの関係者に、教科書問題に関する聞き取り調査を集中・継続的に実施した。その結果、次のような日本批判の三種の層を解明する一方で、そのような批判への新たな二種の問題点の指摘を把握した。 (1)自己の経験をもとに日本批判を展開できる中高年の男女(旧世代)。直接経験者の高齢者に加えて、朝鮮戦争で荒廃した国土に生まれ、復興の厳しさとともに育った現在40代も含まれ、最も厳しく教科書問題に反応した層。(2)経済成長後の韓国に育った20代後半から30代にかけての男女(新世代)。旧世代に対抗し日本文化を積極的に摂取。本来は教科書問題より自分の生活や子どもの進学を優先させる層だが、親類縁者から過去の苦難を当事者の情感を伴って直接感得ができた世代。このような子ども時代に獲得した知識と感情のセットが蘇ったようである。(3)急激に普及したインターネットの世界から学ぶ10代の男女(N世代)。パソコンを自在に操作する中学生を典型に、最も新しい世代がインターネットを介して最も古い旧世代の経験に基づく知識と感情を獲得したことによる結果。インターネットの普及が却ってハングルでしか解せない閉じた言語空間の密度を高め、旧来の日本批判の新たな社会過程が形成されつつあうことを把握。他方、このような日本批判に対し、(1)感情的になってはならない、(2)韓国の教科書にも問題がある、との指摘が新たになされていることも確認。 今後、上記の変化を手がかりにした全調査結果の総合分析により、日本文化開放に伴う意識変容とその社会的文化的基盤の構造の解明と日韓青少年の相互理解推進への課題を提示することから総合報告書をまとめたい。
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