研究課題
本年度は、日本人研究者7名が海外調査を行い、調査対象国タイからタイ人研究者1名が現地参加した。研究組織のメンバーは、交付申請書に記した目的と計画にしたがって、フィールド調査と公文書館等における文献調査に従事した。加藤は、アメリカ・コーネル大学図書館にてインドネシアにおける植民地支配と社会変容に関する文献調査を行うとともに、レフォルマシ期西スマトラにおけるミナンカバウ人の文化的アイデンテイテイの構築過程に関する調査を行った。長津は、マレーシア・サバ州にて海洋民の移動と宗教儀礼の変容に関する調査を行った。林は、東北タイ・ウドンターニーおよび北ラオスのラオ人における仏教実践の再編過程を調査し、石川は、マレーシア・サラワク州クムナ河流域における国際労働力移動と民族間関係の変容に関する調査を行った。小瀬木は、ラィリピン・カリボ地方の伝統産業のジェンダー間分業の調査を、そして貞好は、インドネシア・,スマランしにおける華人エスニシテイの変容について調査した。三野(速水)は、事情により長期出張に出られず当初予定の定点調査を行うことができなかったが、ヤンゴンの国立公文書館等にて資料収集を行った。8名のうち7名は定点継続調査を、平成11年度、12年度に引き続き行っている。最終年度である今年度の成果は、昨年度から引き継ぎ、各調査地における社会変容をより大きな政治的枠組みとの相関においてとらえつつ、従来各自の関心であったよりローカルな問題を、そうした相関の中でより体系的に理解できたことにより、本科研の目的に各自の問題意識を絡め、相互に比較しうる成果を出してきたことであろう。それぞれが、世紀め変わり目である現在とそこへいたる民族間関係の位相を国民国家の形成とその民族政策のなかでとらえた上で、宗教や市場経済導入などといった要因により、実は国家の枠組みのみではとらえきれない動態が見いだされることを描いている。
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