研究課題
基盤研究(A)
3年間にわたり日本人7名と外国人研究者2名のメンバー全員が各自定点調査を中心に調査研究に携わることができた。研究代表者と分担者は、いずれも本科研以前から行ってきた定点調査に加え、空間的にも時間的にもこれを広げ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ミャンマー、ラオスにおける現地調査と、アメリカをも含めた文献調査を行ってきた。その中で、民族間関係や移動の歴史過程に関する基礎的な研究に加えて、宗教の動態、文化の再編課程についての聞き取りと一次資料収集に当たり、かつ従来よりも時空の広がりを目指すことで比較の視点をも可能にしてきた。また、各年度の初めに前年度の成果と今年度の予定を持ち寄り議論する中で、相互に枠組みを確認しあい、全体として一つの方向性を目指した。世紀の変わり目を迎え現在に至る30年あまりの東南アジアは急速な社会変容は資本、人、文化のグローバルな流動性によって引き起こされたもので、国民国家の枠組のみではもはやとらえることができない。そうした現代東南アジア社会の急速な変容を二十世紀の歴史的脈絡に位置づけるとともに、民族間関係、移動、文化再編という国境を越えるカギ概念を元に再検討し、多民族・多宗教からなる東南アジア社会の変容過程のダイナミクスを総合的、学際的に把握することにある。最終的に各調査地における社会変容をより大きな政治的枠組みとの相関においてとらえつつ、従来各自の関心であったよりローカルな問題を、そうした相関の中でより体系的に大きな政治経済社会変動の中で理解できたことにより、本科研の目的に各自の問題意識を絡め、相互に比較しうる成果を出してきたことであろう。それぞれが、世紀の変わり目である現在とそこへいたる民族間関係の位相を国民国家の形成とその民族政策のなかでとらえた上で、宗教や市場経済導入などといった要因により、実は国家の枠組みのみではとらえきれない動態が見いだされることを描いている。
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