本年度は、先ず計画していたネパールの全開発地区のベンチマーク調査を行った。それに関連二次資料を照り合わせながら研究目的に適した調査郡(山間部)の選定を行った。それと平行しながら村落調査用の各種調査票(センサスデータを把握する悉皆調査、生産、消費、職業、作物体系、農作業、農産物流通、食糧調達、持続可能な地域資源利用・環境保全、住民組織化、地域振興に関するサンプル調査)を英語とネパール語で同時に作成した。カトマンズ近くの村に試験的に調査を実施し、必要な修正を加えた後に、同調査票を活用しながら東・西部地区の4郡・8カ村において現地調査を行い、末端における農業の在り方、農村の諸活動に関する基礎的情報を収集し、一部集計・整理を行った。以上の結果、以下の新しい知見が得られた。 1.山間農村においても人口増加は著しく、主に押し出しによって村を出て職を求める人が多い。 2.農業は自然任せでもろく、自給自足的性格が強いが食糧作物(殻類・芋類)の生産は停滞している。 3.それを打破するに地域特異的に換金作物(野菜類、かんきつ類、桑、茶、生姜、スパイス類、竹類)を試験的に導入されている。道路等インフラの整備、技術・政策的サポート、市場の成立、住民の組織化がそれを成功させ、村を活気付ける。その際、人口のUターンもありうる。 4.農村内非農業職の増大は農林業への圧力を低め、持続的地域資源利用・環境保全につながる。 5.農村内に組織化の大きな流れがあり、組織は貯蓄組合・農村金融の受け皿となることに代表されるように非・政府による生産・生活に関する開発サービスの受け皿となることが多い。 6.農村生活は多様化され、総じて現金が伴う取り引きが生活の隅々まで浸透し、自給自足的性格が薄れつつある。 以上の整理・分析、比較検討、理論的位置付け、事例村の一般化、啓蒙化などを推進するため、関連分野の研究者を招聘もしながら計8回の定例研究会を開催し、全体の研究を進めた。
|