研究分担者 |
尾崎 統 統計数理研究所, 予測制御系, 教授 (00000208)
加藤 隆 森林総合研究所, 林業経営管理部, 科長
吉本 敦 宮崎大学, 農学部, 助教授 (10264350)
庄司 功 筑波大学, 社会工学系, 講師 (20282329)
|
研究概要 |
環境規制が厳しくなった北米に代わって、北欧、オセアニア、東南アジア、南米、ロシア等の国々からの木材輸入が増加している。この研究は、現地調査を行いつつ数理モデルを構築して、木材貿易を通した国際社会における森林環境政策、更に地域的な森林資源の利活用について、地域・国際社会と生産・消費国の両視点から計量的に分析しようとするものである。 今年度は主に北欧3国と中国を対象に調査研究を行った。 その成果の一端として、まず第1に、北米材に変わって日本から遠く離れた北欧材輸入が急増したことが指摘される。これは以下の理由による。1)北欧からの輸送コストは2,400〜2,800円/m^3、宮崎から東京は5,000〜7,000円と北欧の方が安い。2)伐採の生産性はスウェーデンでは16m^3/人日以上、宮崎県の平均生産性が3m^3/人日、最も条件の良い高性能機械による生産で10m^3/人日程である。3)造林費の各国比較をすると、日本では格安の宮崎の事例で153万円/haあるが、樹木の成長が遅く木材として利用できるまでに長時間を必要とし、しかも生物の多様性を重視した施業を行っているにもかかわらずスウェーデン、フィンランド、ノルウェーではそれぞれ39万円、35万円/ha、14万円/haと、明らかに一桁違う。高温多湿な日本では下刈りに多大な経費が掛かることが一つの大きな要因となっているが、そのコスト差はあまりに大きい。 第2に、潜在的に膨大な需要を持つ中国の木材輸入が増加している。ラジアタパインの買い付け競争で日本、韓国よりも高く買っているという。これは原木を高く買っても安い労賃と簡素な加工設備で極めて低コストで加工可能な中国の生産体制が背景にある。旺盛な中国木材輸入は、環太平洋圏における木材貿易構造を大きく変える可能性を持つ。
|