研究課題/領域番号 |
11691091
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
応募区分 | 一般 |
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
永岑 三千輝 横浜市立大学, 商学部, 教授 (70062867)
|
研究分担者 |
小野塚 知二 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (40194609)
雨宮 昭彦 千葉大学, 法経学部, 教授 (60202701)
廣田 功 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90055236)
新原 道信 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (10228132)
|
キーワード | ヨーロッパ共同体 / ヨーロッパの建設 / ヨーロッパの空間 / ナショナル・アイデンティティー / ヨーロッパ・アイデンティティー / 社会的ヨーロッパ / 民族国家 / 社会憲章 |
研究概要 |
1.研究協力者ケルブレ教授(ベルリン、フンボルト)やフランク教授(ソルボンヌ、パリ第一)、デュムラン教授(ルーバン・カトリック)の主導するヨーロッパ共同体歴史家会議の総括会議(パリ)に参加し、ヨーロッパ共同体史の総括的キーワードとして「ヨーロッパの建設」、したがってまた「ヨーロッパの空間」が繰り返し議論の的になっていることが新鮮だった。共同体史は幾多の困難、複雑な阻害要因、対抗的諸潮流れに抗する建設的拡張的努力の成果として把握すべきものであり、21世紀における「アジアの建設」は諸困難を段階的に克服してきたヨーロパ統合史を総合的に捉えなおすことを迫っている。 2.「普通の人々」の視点から比較史的に統合史を見るというわれわれの問題設定から統合の現段階をみると、エリートと市民の間で統合に対する意識に相当ずれがある。統合過程がエリート主導であったことの結果である。欧州統合の「思想」の原則に対する支持は相当高いが、単一市場や通貨統合など具体的な問題になると支持は相当変動する。これは市民から見て統合の具体的なメリットが感じられないことの結果であろう。 3.市民の統合に対する態度については、同一国内でも地域、社会階層、職業、所得、教育レベル、年齢、性別、宗教などの社会経済的、文化的要素によって顕著な差異がある。例えば、フランスの場合、ブルー・カラーと農民層の支持が低く、管理職員層や知的職業層の支持が高く、教育レベルが市民の統合に対する態度の最も重要な決定要因である。4.ナショナル・アイデンティティーとヨーロッパ・アイデンティティーは並存している。市民の圧倒的部分は既に「国民であると同時にヨーロッパ人である」と意識している。ナショナル・アイデンティティーのみ、またはヨーロッパ・アイデンティティーのみを感ずる市民はごく少数である。市民の統合への原則的な支持がより強固なものとなるには、市民から見て統合の影響が具体的に感じられる事が必要であり、その点で「社会的ヨーロッパ」の実現は重要な意味を持つ。
|