研究概要 |
6月に岡田がフランスへ出かけ,白亜系の専門家であるツール大学のBreheret教授から,調査地域の詳しい地質情報を集めた。また,共同研究者であるBeaufort博士を訪ね,2人でOAE1a層の現地予備調査を行うと共に,ボーリング装置と作業員の手配など掘削作業の準備を行った。この情報に基づいて,中部白亜系の露頭から柱状試料を切り出すエンジンカッターや各種用具を国内で用意し,10月23日から11月7日まで,日本側研究者5名と研究協力者の大学院生2名がフランスへ渡航した。エクサンでフランス側研究協力者2名と合流し,試料採取に必要な用具類を追加調達した後,2班に分かれてレンタカーで現地入りした。Barrem村北方に露出するOAE1a層担当班は,昨年のOAE1b層と同様に精密な柱状図を作成し,エンジンカッターで連続解析用の柱状試料を切り出した。また,その上位層準についても一定間隔で試料を採取した。 Barrem村のOAE1a層から北西に約100km離れたRosans村には,傾斜の緩いOAE1b層が露出する。OAE1b層担当班は,現地で雇用したボーリングチーム3名と合流し,2カ所で掘削を試みたが適地ではないことがわかった。結局,村役場と交渉して農道を通行止めにしてもらい,理想的な掘削地点である第3地点で計3本のボーリングを行った。ここで得られた試料を用いてバクテリアの分析を行った結果,試料1gあたり5,000-10,000の細胞を含んでおり,遺伝子解析の結果は海洋性の好冷性細菌と深海底に特異な高圧細菌の遺伝子のみであった。この結果,この黒色泥岩は,水温20℃以下の嫌気性環境下または還元的環境下で堆積したことが明らかになった。これらのボーリング試料と切り出し試料についての古生物学的・地球化学的解析は現在進行中である。
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