研究分担者 |
西 弘嗣 九州大学, 大学院・比較社会文科研究科, 助教授 (20192685)
川幡 穂高 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授
坂本 竜彦 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271709)
長谷川 卓 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (50272943)
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研究概要 |
本年度はこれまでにフランスで採取した試料を分析し, いくつかの研究成果を学会発表することに努めた。2000年にRosans村南方で掘削したコアの年代を石灰質ナノ化石生層序学により研究したところ, 下部アルビアン階最上部の堆積物であることが分かり, 広義のOAE1bエベントの最後のフェーズに相当する。このコアに関するバクテリアDNAの分析結果は1999年12月のAGU大会で口頭発表するとともに, Scienceに研究論文を投稿した。OAE1b中期のキリアン〜パキール層準からの試料については各種の分析結果が出始め, 2001年9月に札幌で開催された第7回国際古海洋学会議において4つのポスター発表を行った。石灰質ナノ化石の分析では, キリアンとパキール層準に限ってNannoconusの急増が認められ, ナノ化石の絶対産出個体数が減少することが分かった。これらの観察結果は保存状態の違いによるものでないので, ラミナの発達する層準では海洋における基礎生産の構造自体が変わっていたことは明らかである。このデータにErba(1994)モデルを適用すれば, パキールとキリアン層準堆積時には海水の垂直混合が弱まって栄養塩勾配が低下し, 海洋表層部は貧栄養化して, 底層水の貧酸素状態が発生したことになる。また, パキール層準の174cmを1cm間隔で分析した高分解能解析では, 短い間隔でNannoconusが急減することが確かめられ, 全体的にラミナの発達度合いと関連することも分かった。このことから, 当時の海洋における垂直混合は長期的には弱体化したものの, 短期的には急速に回復した時期が何度かあったことになる。
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