研究分担者 |
西 弘嗣 九州大学, 大学院・比較社会文科研究科, 助教授 (20192685)
川幡 穂高 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授
坂本 竜彦 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271709)
長谷川 卓 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (50272943)
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研究概要 |
1999年秋と2000年秋にフランス南東部Barreme村の北方と東方でOAE1aとOAE1b層準についての現地調査を行い、約1m間隔で露頭試料を採取するとともに、OAE1aのゴグエル層とOAE1b中部のキリアン及びパキール層については、柱状に切り出して持ち帰った。また、Rosans村南方でOAE1b最上部から長さ8mの試錐試料を採取した。試錐試料についてバクテリアの分析を行った結果、試料1gあたり5,000-10,000の細胞を含んでおり、DNA解析の結果、この黒色泥岩は、水温20℃以下の嫌気性環境下または還元的環境下で堆積したことが判明した。この結果は2001年秋のAGU大会で口頭発表し、Scienceに投稿中である。OAE1b中期については、キリアンとパキール層準に限って石灰質ナノ化石の絶対産出個体数が減少し、Nannoconusが急増していることにより、ラミナの発達する層準では海洋における基礎生産の構造自体が変わっていたことは明らかである。つまり、パキールとキリアン層準堆積時には海水の垂直混合が弱まって栄養塩勾配が低下し,海洋表層部は貧栄養化して,底層水の貧酸素状態が発生した可能性が高い。パキール層準の柱状試料174cmを軟X線と薄片観察で解析したところ、黒色頁岩部は数ミリ単位の葉理構造を持ち,浮遊性有孔虫に富む部分と有機物や粘土鉱物に富む部分が数百μm間隔で互層しており,海洋における基礎生産の急激な変化を裏付けている。さらにパキール層準を1cm間隔で検鏡した結果、短い間隔でNannoconusが急減することが確かめられ、全体的にラミナの発達度合いと関連することも分かった。このことから、パキール層準が堆積した約5万年間を通しては、海洋での垂直混合は全体的には弱体化したものの、短期的には急速に回復した時期が何度かあったことになる。
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