研究課題
基盤研究(A)
本研究では1997年のイベントをはじめとするインドネシアおよびその周辺域の植物燃焼の気候影響が調べられた。1997年から1998年にかけての大規模な森林火災による焼失面積は1.5Mha(百万ヘクタール)から170Mhaまで幅広い評価があるが、3.6Mhaから10.0Mha程度の値が妥当であろうと本研究では考える。この大きさは1982年から1983年にかけて起こった火災規模の3倍程度であった。このような同地域の森林火災は、エルニーニョ指標である南方振動指標と良い関係が見られるが、消失面積の大部分が生産林で起こった事実からも明らかなように1997年の大規模なイベントは過渡な開墾にも起因することが土地利用指標の解析から明らかになった。このような人間活動の影響は消失域の回復過程にも見られ、森林地区とプランテーション地区は人間活動域に近いほど回復が早く、草原域は逆に遅くなる傾向が見られた。現地での燃焼実験を通して、植生燃焼の指標になる大気中の一酸化炭素濃度と、植物種に依存するメタン、C2ガスおよびC3ガス濃度の良い相関式が得られた。またC13同位体比の測定から多量のC3植物の燃焼が確認された。発生したガスおよびエアロゾル粒子の輸送とそれに伴う化学反応現象がゾンデと航空機によって観測された。オゾン前駆物質の上層への輸送によってオゾン濃度は対流圏上層まで40ppbvと静穏時の2倍程度増加したことが観測された。エアロゾルはしかし、1997年の大規模な火災の場合でも下層3km程度に閉じこめられていた。同地域からオーストラリアにかけての上層の気塊は、東南アジアの広域からの寄与と、アフリカからの寄与の2経路があることが確認された。また対流圏と成層圏の間のカップリングにより汚染物質量が水平方向に不均質な分布をすることも明らかになった。TOMS衛星センサーとAVHRR衛星センサーによって得られたエアロゾル量の水平分布構造はお互いに異なり、炭素性エアロゾルとインドネシア域特有の硫酸起源エアロゾルの2種類のエアロゾルが広範囲に異なる分布をしていたことが推測できた。1997/98年のエアロゾル粒子の排出量は衛星観測やバルク法による推定を総合する2.3メガトンから6.1メガトン程度であったことが明らかになった。
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