1 本研究は公式には1999年6月に補助金交付が決定されたが、研究代表者は同年3-4月に私費によりペルーに赴き、共同研究者である国立サンマルコス大のロメロ氏と研究協議をおこない、平成11年度の研究方針を決めた。これにより、パルー中部太平洋岸のアンコンおよびパラカス地域に定期観察地点を設け、ロメロ氏を責任者として1-2ヶ月毎の調査をおこなうこととなった。また、研究代表者は1986年以来ロメロ氏と共同研究を続けているが、本科研費研究の目標の一つであるエルニーニョ現象の生態系に対する影響を解明するには、群集パターンの長期的な変動を把握することが必要であるため、1998年以前のデータ整理をおこなうことで合意した(データ量が膨大なため、特定のデータ解析目的に使用するための整理が必要である)。 2 予算の制限から一回の派遣調査に限ることになったが、以前のデータとの季節的な整合性をかんがみ、2000年1月(南半球の夏)に集中的な調査をおこなった。また、2000年2月から3月にかけてロメロ氏を九大天草臨海実験所に招へいし、データ解析の調査をおこなっており、3月初旬現在、研究作業が進行中である。 3 パラカス国立公園域では群集の多様性に関する(定期)データをとったが、期待したほど沿岸帯の群集組成は複雑でなく、200kmほど北に位置するアンコン沿岸域の群集多様性を越えることはなかった。アンコン沿岸域では群集組成が1998年のエルニーニョ以前の状態に復帰しつつある傾向があるものの、群集構成種によってパターンが微妙に異なっており、今後の詳細なデータ解析が必要である。 4 現在解析中のデータは、(1)環境要因、特に水温および水位の変動;(2)岩礁生態系の高位捕食者として重要なヒトデ類およびイワガニ類の個体群動態および捕食生態;(3)空間占有者としての二枚貝類の時空間動態;(4)群集の空間利用パターンの変化である。
|