研究概要 |
平成12年度は,約3週間,雲南省西部で野外調査を実施し,多くの地質学的新知見を得るとともに,多数の化石,岩石試料を採集した。これまでに明らかになったことを要約すると,1)Baoshan地塊の下部ペルム系から,確実に氷河起源の異常礫(ダイアミクタイト)を含む寒冷な砕屑岩相を確認した。直径30cmの巨礫が砂泥互層中にドロップストーンとして含まれている。また,この異常礫を含んでいる砕屑岩はストーム堆積物を含んでおり,明らかに浅海相からなることが判明した。2)温暖だが単純な動物相からなる中部ペルム系から,新たにCimmerian陸塊各地で共通に産出する,Shanita?-Hemigordiopsis有孔虫化石群が産出することを発見した。3)Changning-Menglian縫合帯には,海山型の炭酸塩buildupsが多数分布しており,系統的な試料採集を行った。Shifodong Sectionでは,上部ペルム系に相当する可能性のある石灰岩が発見された。また,YutangzhaiやLaochang sectionでは,下部石炭系に相当する石灰岩が含まれていることが明らかになった。この地域の石灰岩体については,成因と詳細な層序の検討が早急に必要である。4)中国側協力者2名を招聘して総括会議を開催し,結果のとりまとめを行った。Baoshan地塊は,石炭紀前期には温暖な陸棚浅海に位置していたが,石炭紀後期にゴンドワナ大陸とともに寒冷化,旋回南下し,ペルム紀前期に寒冷域でリフティングによってゴンドワナから分離北上を開始し,ペルム紀中期には中緯度付近まで北上していたと考えられる。このシナリオは,化石や堆積相から強く支持されることが明らかになった。
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