研究課題
基盤研究(A)
北極域における対流圏エアロゾル、特に「北極ヘイズ」の特性や挙動を調べ、放射に対する役割、さらには雲の生成過程やオゾンの消滅過程におよぼす影響を明らかにすることが目的である。以前より大気観測を続けているスバールバル、ニーオルスン観測基地にて、エアロゾル・雲観測の確立をはかった。粒子数濃度測定や散乱係数の測定、凝結粒子測定、フィルターサンプリングを進めた。またリモートセンシングとしてスカイラジオメータによる光学的厚さや天空光測定、マイクロパルスライダーによるエアロゾル・雲の鉛直分布測定、降雪粒子測定等を、これまでのレーダやマイクロ波放射計による測定と併せ進めた。これらの結果から、雲が生じている場合のエアロゾル量に違いがあること、異なる空気塊により、雲粒が少ない場合と、大雲粒付雪結晶が見られる場合があった。また、雲の出現頻度についての統計、通年のエアロゾルの挙動とその光学的特性の変動が明らかにされた。地上オゾンの連続測定も継続し、春季の地上オゾン急減とエアロゾル等の変動との関係を調べ、海面境界層内でのハロゲン化学や海塩粒子変質とオゾン減少とに興味ある関係が得られた。北極対流圏エアロゾルと放射の総合観測(ASTAR 2000)を航空機と地上で同期して実施した。航空機からはサンフォトメータ測定やエアロゾルの数濃度、散乱・吸収係数測定、フィルターサンプリングを行い、地上観測と比較した。また、ゾンデや係留気球からもエアロゾル等の鉛直分布を測定した。さらには、人工衛星SAGE-IIによる観測とも対比した。一方、気象データ、気象客観解析データの解析を行い、循環場の情報や大気の流れを調べた。2000年3月から4月にかけて6週間にわたる集中観測を実施し、延べ80時間、19回の飛行プロファイルを取得し、濃い北極ヘイズの層を含む貴重なデータが得られた。北極域気候モデルにこのデータを組み入れ、放射強制力等の評価を行っている。その他、2002年3月、北極海横断航空機大気観測(AAMP 02)に参加し、双発ジェット機にサンフォトメータやエアロゾル測定器を搭載し、北極海上空の成層圏で極渦内外の水平分布や、アラスカ・バロー地域やスバールバル近傍での高度分布を取得した。
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