研究課題
基盤研究(B)
1999年8月11日ヨーロッパを通過した皆既日食に3チームの観測隊を派遣した。国立天文台と京都大学はトルコのエラジ市にて観測した。国立天文台隊は北極域のコロナをターゲットにして分光観測を行い、8枚の良好なスペクトルを取得することに成功した。コロナの底部において電子温度200万度という、極域の温度としてはやや高めの結果を得ている。京都大学隊は、口径15cm屈折望遠鏡、4種のフィルター、400万画素の高性能CCDカメラを用いて、1秒角の空間分解能でかつ3種類の異なる温度におけるコロナ構造のイメージの撮影に成功した。今後、人工衛星の同時観測データと併せて、約1万度から500万度程度にまで渡る、広範囲の連続的な温度構造分布を明らかにして行く。九州大学隊は、皆既日食により陰と日照になった電離層の非対称な境界条件ができることに注目し、地磁気の5点観測を実施した。皆既日食の軌道沿いにある英国のハートランド、ハンガリーのナジャチェンク、南アフリカ連邦のハーマナス、イタリアのラキーラ、カメルーンのガロアである。かつて加藤らによって報告されていた皆既日食の陰による数時間の磁場変動の発生は北半球においては追認できたが、南半球では検出されなかった。この新しい観測事実は、磁気圏・電離圏物理学上の大発見で、数時間の磁場変動を引き起こす日食時の電離層電気伝導度などの変化は、反対半球に影響が伝わらない、即ち、皆既日食が起こっている片側半球の電離層内で閉じた電流系が形成され、沿磁力線電流として反対半球に流れない物理作用が地球電磁圏で起こっていることが明らかにされた。H12年度は国立天文台にて成果報告会を開催し、各チームの結果に関する議論及び今後の研究の進め方等についての討論を行った。
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