研究概要 |
製鐵所で発生するダストを処理するため、我が国においては既にコールドペレットを製造し高炉の装入物として使用されたり、ミニ造粒された後、焼結プロセスに投入されたりしている。ブラジルの共同研究者は製鐵プロセス及び電気炉で発生するダストの物理化学的性状を研究し、前者については、Znがほとんど含有されておらず、製造した炭材内装コールドペレットは強度、還元性とも十分であり、ふくれや破壊は生ぜず、ガス還元、溶融還元法ともに利用できることを確認している。また、Znを複雑なスピネル(Zn,Fe,Mn)Fe_2O_4として相当量含有する電気炉ダストについても、炭材内装コールドペレットを作成し、還元性、強度等が調べられた。その結果、1060Cまで加熱すると、異常ふくれが生じること、1200C以上に加熱すると95%のZnが除去でき、また、溶融還元すると,Znは約70%がZnOとして気化し、ダストに濃縮される。このダストはZn製造用の原料として使用可能である。このようなダスト処理プロセスとしてFAR炉の開発研究も進められている。 日本側の共同研究者は炭材フィルター法によるダスト中の鉄と亜鉛の分離プロセスの開発を進めている。これは電気炉ダストを1000Cの高温に加熱したコークス充填層に導入し、複雑なスピネル構造になっている亜鉛を還元気化し、そのまま、コンデンサーに導き、液化回収する。一方、鉄は炭材フィルターで還元されるが固体状態であるためコークスとともに排出され、そのまま、溶融還元法や現行製鐵プロセスに投入され、回収される。 当研究所では、既にコークス充填層中における微粉(オーバーミクロン)の挙動の研究を行い、炭材充填層を使い効率よく分離可能であることを示した。しかし、電気炉ダストにはサブミクロン粒子が多量に含有されており、開発を進めている炭材フィルター法により、このサブミクロン粒子の分離が可能であるかどうか、コールドモデルを作製し実験的に研究した。その結果、条件により、十分な効率で分離できることを見出している。 他方、スラグの有効利用技術として、溶融スラグの持つ熱エネルギーの回収とともに均質粒度の微粒スラグを製造するための基礎的な研究を試みた。回転カップアトマイザー法の疑熱間モデルを作製し、実験室的なワックスの微粒化、ならびに、テスト試験として、高温溶融スラグの微粒化を行った。ワックスの微粒化については、特定の条件下で均質な粒度の微粒子(粒径約0.7mm)が得られた。溶融スラグの微粒化についても、微粒子が得られており、実用プロセスの研究が期待される。
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