研究概要 |
本研究では、1999(平成11年度)に3回の相互訪問と野外調査(つごう3回)、2000年に野外調査および2001年にロシア人研究者の招聘を行った。野外調査では主としてカムチャッカ半島のムトノフスキー地熱地帯の調査を行った。これらの相互訪問および野外調査の結果、以下のようなことが明らかになった。 カムチャッカ半島には、南北に2列の大きな火山列があり、29個の活火山が分布している。活火山のほとんどは東側火山列に分布し、この火山列の南方延長は千島(クリル)諸島から知床半島に連なり、千島弧を形成している。カムチャッカ半島の地熱資源のほとんどは東側火山列に賦存している。Paratunsky、Malkinsky, Paushetsky, Mutnovsky等が代表的地熱地帯であり、このうちParatunsky、Malkinskyは州都のPetropavlovsk-Kamchatsky(P/K)近郊に位置し、現在は温泉、鮭養殖場、農業施設等に対する熱水利用が図られている。Mutnovsky地熱地帯は、P/Kより120km南西に位置し、現在までに約90本の地熱井が堀削され、パイロットプラント(12MW)が稼動するとともに、2001年末を目標に20MWの実用プラント(Dachny Site)の建設が進められており、将来的には計40〜50MWの発電が計画されている。これらの地熱開発設備は、Mutnovsky火山の標高800m程度の溶岩台地に展開している。 本地域の地質構造は大きくN-S方向の背斜構造と、NE-SW系のグラーベン構造が卓越し、断層もN-S方向とNE-SW方向に発達する。地表に分布する火山噴出岩類には、3方向(N-S, NE-SW, E-W)の熱収縮割れ目が観察される。 熱水の最高温度は約300℃で、300℃の等温線は、海抜-750mに位置している。熱水の上昇域は、熱源の一部と考えられる閃緑岩の縁に沿って形成されている。貯留層の規模は、南北5km、東西3km、深度2km程度と推定され、エンタルピーは1270-1390 kj/kg、72MW程度の発電ポテンシャルが期待されている(Kiryukhin,2000)。
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