発展段階の異なるアジア諸国(インド、タイ、マレーシア、日本)を対象に、環境の微量汚染(重金属による汚染に重点をおく)が誘発する人の健康リスク評価の現況を、研究状況、国等による環境対策・環境モニタリングの実施状況、食糧・飼料の輸出入と食習慣等の視点から分析し、その特性を明らかにする。環境汚染の実態と、各国がそれぞれの状況に応じて採用している環境保全対策と、人の健康リスク管理対策の特性を比較・検討する。併せて、アジア諸国における、人の健康リスクに注目した環境監視・影響評価・リスク管理の国際共同学術研究の実施可能性について検討する。 平成11年度は、当初研究計画に従い、研究代表者がWHO本部(ジュネーブ)、UNEP本部(ナイロビ)等の国際機関を訪問し、環境の微量汚染が食物等を介して人にどの様な健康影響をもたらすかを評価するための国際的な調査研究の動向並びに環境監視の現況について調査した。また、研究分担者の米田がタイ(アジア工科大学、他)およびインド(インド工科大学、他)を訪問し、これらの国々における環境微量汚染のモニタリング、環境データの集積、健康リスク評価の現況等について調査した。健康リスク評価の国際比較研究の対象物質としてガソリン中に含まれる鉛および農薬のDDTに注目し、具体的な研究を開始することとした。途上国ではガソリンの無鉛化が国家プロジェクトとして推進されており、なおDDTが農薬として使用されている。既にこれらの対策を完了したわが国の経験の健康リスク評価面からの検討はこれらの国々の今後の環境対策にとっても大きく貢献すると期待される。
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