研究課題
基盤研究(B)
深刻化する温暖化環境のなかで伐採や山火事など撹乱の危機に瀕しているのが、東ユーラシア大陸から我が国にかけて広がる明るいタイガと呼ばれるカラマツ類を中心とした森林である。温暖化低減の役割が森林に求められるなかで、一時期はC4植物の可能性も検討されるほど高い光合成能力を持つカラマツ類森林の機能評価が急務である。この目的を達成するために、東シベリアから中国東北部に広がる永久凍土地帯に発達したカラマツ林に試験地を持ち、長年に渡る調査を実行してきたロシア・科学アカデミー・スカチェフ森林研究所と中国・黒龍江省にある東北林業大学の協力を得て、現地調査を実施した。ロシアでは南北斜面に成立したカラマツ林の生理生態学的特性をガス交換能力から推定し、土壌呼吸も含めて温暖化のもたらす植生変化の予想を行った。その結果、温暖化が進行すれば乾燥耐性のあるスノキ類が増え、マツ類やビャクシンなどが侵入するが湿潤環境を好むトウヒ類は消失する、と予想した。中国の東北林業大学周辺は凍土南限地帯に位置する。このため固定試験地を確保し長期モニタリングの基礎を築き、森林のCO2フラックス研究を関始した。南限の変化からより精度の高い森林の応答機能を評価できる。一方、シベリアカラマツを中心に制御環境で材料を育成し、木部形成に及ぼす高CO2の影響を評価した。これによると肥大成長は栄養塩が十分にあるときのみ加速されるが細胞壁の肥厚はなく、細胞内腔が大きくなっていた。これから推論すれば高CO2条件になってもカラマツ類のCO2貯留能力が飛躍的に向上はしないことになる。しかし、メバエを使った実験なので木部は未成熟で今後の研究を待たねばならない。数年後に設定した試験地の詳細な調査を実施し、予測精度を上げたい。
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