季節凍土発生流域における水循環・物質循環特性と環境変化の影響に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11691163
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 応募区分: 一般
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 笹 賀一郎 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (70125318)
• 研究分担者: 野村 睦 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (20271629) ; 植村 滋 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助教授 (80250497) ; 佐藤 冬樹 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助教授 (20187230) ; 柴田 英昭 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助手 (70281798)
• キーワード: サハリン / 季節凍土 / ササ群落の分布 / 流域観測 / 流出量 / 渓流水質

研究概要

平成11年度は、本研究の第1年度目にあたり、夏期・冬期の2回にわたる調査により、ササ群落の成立・非成立(季節凍土の非発生と発生)を指標とした観測流域の最終選定、観測流域内の地形や土壌・植生形態の把握、観測機器類の設置、冬期を中心とした水分・物質動態の観測が主な目標であった。現在は夏期調査が終了した段階にあり、得られた成果や観測の進行状況は以下のようである。
1.サハリンにはチシマザサとクマイザサの2種の群落が存在し、クマイザサ群落は南部日本海側の低海抜地帯を中心に分布し、チシマザサ群落は北緯50度付近までの山頂部のみに点在してることが明らかになった。
2.これらのササ群落存在地点は、地温や構造土・植生状況の調査から、吹溜まりや雪庇などとして積雪が集中し、土壌凍結の発生しない地点であることが明らかになった。とくに、地温の観測から、ササ群落の存在地点は厳冬期においてもプラスの値を保ち、ササ群落の存在しない地点では-5℃まで低下することが把握され、厳冬期における積雪と土壌凍結状況との関連が実証された。
3.ササ群落存在の有無を指標として季節凍土発生流域と非発生流域の選定をおこない、水分動態・物質動態に関する観測流域の最終決定をおこなった。また、観測流域の地形測量と植性・土壌状況等の把握をおこない、水分動態に関する観測機器の設置を完了させた。
4.今年度は冬期観測も実行し、積雪状況をはじめとした厳冬期環境の把握、ササ群落などの下層植生の冬期状況の把握、積雪と表土凍結の状況および渓流流出状況の把握、積雪の化学成分や渓流水質状況の把握などをおこなう計画である。

研究成果

• [文献書誌] 笹 賀一郎: "チシマザサおよびクマイザサの地中芽形態と地上部被害への反応"BAMBOO JOURNAL 印刷中. (2000)
• [文献書誌] Haraguchi, A.: "Effects of nutrient loadings from the catchment of dairy farms on Asajino mire, a small coastal ombrotrophic mire in northernmost Japan"Ecological Research. 15(in press). (2000)
• [文献書誌] Satoh, F.: "Ionic elution from the acidic snowpack during spring thaw period in the northern part of Hokkaido"Res. Bull. Hokkaido Univ. For.. 56(2). 1-10 (1999)
• [文献書誌] 野村 睦: "気温と降雪深による山地の積雪深と積雪水量の推定"北海道大学農学部演習林研究報告. 56(2). 11-19 (1999)
• [文献書誌] 笹 賀一郎: "強風寒冷地における厳冬期環境とササを中心とした植生群落の分布"日本林学会学術講演集. 1. 569-570 (1999)
• [文献書誌] 柴田 英昭: "北海道北部の森林流域における土壌中の物質動態"日本林学会学術講演集. 1. 531-532 (1999)
• [文献書誌] 小澤 恵: "北海道北部の森林における人為的表土除去が土壌溶液の化学組成に及ぼす影響"日本林学会学術講演集. 1. 527-528 (1999)
• [文献書誌] 小澤 恵: "多雪寒冷地域の厳冬期から融雪記における森林土壌内での物質動態"日本土壌肥料学会北海道支部会要旨集. (1999)
• [文献書誌] 柴田 英昭: "酸性雨研究と環境試科分析"愛智出版. 127 (2000)