研究概要 |
1999年度調査はインドネシアおよびパプア・ニューギニアを予定した。インドネシアの政情が不安定で,代わりに2000年度に予定していたタイの調査を実施した。1)4月30日〜5月15日,山口,池谷,田中(5月10日帰国),タイ・マレー半島中部のアンダマン海およびシャム湾にて共同研究者のアングスパニック博士(Prince of Songkla University)と共同調査。2)9月30日〜10月12日,山口,池谷,向井,パプア・ニューギニア調査。3)11月16日〜12月2日,向井,塚越,主にタイ(一部マレーシア)・マレー半島南部のアンダマン海およびシャム湾にて調査。フジツボ類(山口):外海種(Tetraclita,Tetraclitella,Tesseropora,Newmanella)および内湾種でもBalanus amphitrite,B.variegatusはマレー半島両岸に分布し,インド-西太平洋に広く分布する。けれどもマングローブに発見されたB.rhizophorae,B.patelliformisおよびB.n.sp.はB.amphitrite種群に属し,マレー半島の限られた地域に分布する。RhizophoraeおよびB.patelliformisは今まで原記載以後第2番目の発見となり,それらの形態変異や地理的分布およびB.n.sp.の発見はB.amphitrite種群の進化を理解するために大変重要である(Puspasari,Yamaguchi & Angsupanich 2000,Puspasari,Yamaguchi & Angsupanich投稿中)。貝形虫類(池谷・塚越):タイにて37資料,マレーシアにて5資料,パプア・ニューギニアにて16資料を採集し,そのうち8資料(タイ)から21属43種が同定された。主な優占種はHemicytheridea cancellata,H.ornata,H.reticulata,Loxoconcha cf.pentoensis,Neomonoceratina inqua,Phlyctenophora orientalis,Tanella sp.である。藻類,田中は中央から南部タイのマングローブ卓越するいわゆるコケモドキ-アヤギヌ群落と呼ばれる次のような汽水性藻類を採集した,Caloglossa leprieurii,C.continua,Bostrychia tenella,B.radicans,B.moritziana,Stictosiphonia.kelanensis and Catenella.nippae。モエビ類,向井はタイでは,3ヶ所の3サンプルで約200個体,パプア・ニューギニアでは6ヶ所の9サンプルで総計約1200個体を採集した。その中には,Latreutes pigmaeus,Periclimenes indicus,Paeneus sp.などが発見された。特に多く小型のローソクエビ科がパプア・ニューギニアのミルン湾で採集された。多くの種は今まで日本,オーストラリア,パラオなどから報告されてきた。しかし,いくつかの種は他の場所では見られていない種類もあり,まだ研究の途上であるが,生物地理を理解する上で重要な分類群と思われる。
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