研究概要 |
2000年度は7月15日〜30日までベトナムでベトナム国立大学P.N.HongおよびD.V.Nhuong教授とハノイ〜ホーチミン間の海岸で、また12月10日〜20日までフィリピンでフィリピン大学海洋科学研究所のM.D.Fortes教授とルソン島北部ボリナオおよび中部バタンガス、ミンドロ島プエルト・ガレラおよびマクタン島の海岸でマングローブを含む生態系で甲殻類の生物地理の共同調査を実施した。ベトナムでフジツボ類(担当山口)の歴史的研究は無く、全てが新知見となる。特に内湾種のB.amphitrite,B.reticu1atus,B.kondakovi,B.venustus,B.variegatus,B.rhizophorae,B.thailandicusが特徴的で、最後の2種は今までマレー半島以西にしか知られていない分類群で、新しい地理的分布となる。スナガニ科カニ(担当和田)ベトナム北部では、全部で8属16種で、その内2種が新地理的分布となり、それらの興味深い行動様式が観察された。ベトナム南部では、7属14種が観察された。それらは全て南部からの初記録と思われる。行動の記録としてイワガニ科の中でスナガニ科に近縁とされMetaplax crenulataのwaving displayを記録した。紅藻アヤギヌ類(担当田中)アヤギヌ属は世界中の温帯から熱帯の汽水域に生育し、現在12種が記載されている。マングローブ域における主要な藻類であるが、ベトナムでは今までに報告はされたことがない6種のアヤギヌが確認された。その内C.leprieuriiは、他地域のものと大きく形態の異なる藻体(C.leprieurii矮小型)がベトナムで発見された。貝形虫(担当塚越)ベトナムのラグーンからStigmatocythere属の1種が確認された。その近縁種は、日本の完新世の高海面期に一時的に化石の記録があるが、現在日本近海には生息していない。
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