研究概要 |
前年度収集した植物資料の集団遺伝学的・分子系統学的解析を進めた。その予備的解析結果によりグンネラ属等がアンデス沿いに分化していった過程の解析に最適であることが推定された。それに基づき本年度の調査地域決定を練った。すなわち,アンデス最南部であるパタゴニア地域,典型的冷温帯域であるチリ南部地域(チロエ島),暖温帯域に対応すると言える南緯38度のサンチャゴおよびその北方域,およびボリビアのアンデス域の各地域を採集地域とすることとして計画をたてた。いずれの地域も交通手段はレンタカーしか無いために多人数での調査は極めて困難なため,調査班を2班に分け,さらに南米域の植物に詳しい者と植物採集に長けた者との2名を研究協力者として参加を要請し,調査班を構成した。 チリにおいてはグンネラ2種について各地域でサンプリングを行った。また現生の植物でもっとも進化した位置にあり,多様に分化していることから多大な注目をあびているキク科が南米行きで起源した可能性が高いため,キク科の最も原始的な一群であるバルナデシア連,近縁なコウヤボウキ連,そしてキク科の起源群として注目されている南米固有のカリケラ科についての材料収集を行った。ボリビアにおいては広大に広がる高原地帯での植物分化と北方,南方との比較の両目的のため,ゴマノハグサ科,カタバミ科,リンドウ科,キク科その他を収集した。 本年度収集品は前年度の収集品と合わせ,集団遺伝学的・分子系統学的解析を行っているところである。
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