研究概要 |
日本列島沿岸域の介形虫類は西太平洋地域の介形虫類と分類学上きわめてよく類似する。その理由の一つとして,これらの動物群が地質時代のテーチス海から派生した共通の祖先を持つことによるものと考えられる。この研究の目的は特に中国大陸沿岸域の介形虫類群集との系統関係を詳しく調査することにある。 この種の研究は研究標本の抽出,分類学的検討に時間を要するため,これまでになされた研究はその一部にすぎない。これらの標本に基づいて,今後引き続き分類群ごとの詳しい研究がなされる予定である。以下に,これまでに得られた結果の一部を報告する。 3ヶ年の現地調査によって中国大陸沿岸のほぼ全域にわたり,総計260地点,約300個の含介形虫試料を採集した。これらの試料は主として岩礁地および砂泥地に生育する海草および海藻を採集し,それらを水洗,ふるい分けし,介形虫個体を顕微鏡下で抽出した。これらの介形虫標本の種分類の作業が現在進行している。 中国北部沿岸の試料をもとに介形虫類の群集解析が行われ,環境要因と種分布との関係が論じられた。これまでに遼東半島沿岸では,17属27種が,また山東半島沿岸では42属83種の介形虫種が同定され,Qモードクラスター解析によって,5つの介形虫相が確認された。
|