研究課題/領域番号 |
11691189
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三上 章允 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40027503)
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研究分担者 |
山森 哲雄 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (80260206)
後藤 俊二 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (90093343)
竹中 修 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00093261)
小池 智 東京都神経科学総合研究所, 微生物学・免疫学研究部門, 副参事研究員 (30195630)
小松 英彦 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (00153669)
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キーワード | カニクイザル / 色盲 / インドネシア / 生態調査 / 網膜電図 / 視物質 / 遺伝子 / 視覚 |
研究概要 |
ヒトで約2%と言われる色盲はこれまで、マカカ属のサルでは報告がなかった。しかし本研究の申請者らの予備調査で、インドネシア、ジャワ島パンガンダランのカニクイザル血液から視物質遺伝子の異常が見つかった。平成11年度は、網膜電図による色盲判定の予備実験、生態学的な予備調査を行うとともに、ジャワ島パンガンダランにおいて73頭のカニクイザルを捕獲した。視物質遺伝子の解析の結果、色盲ザルと判定した2頭とキャリアと判定した3頭をボゴール農科大学に移送し、次年度以降の研究のために飼育を継続した。平成12年度は、前年度捕獲した色盲ザルの網膜電図を記録し、色盲ザルで赤の感度が著しく低下していること、キャリアのサルは正常なサルと色盲ザルの中間値をとることが明らかにした。また色盲判定の行動実験のため図形弁別課題の基礎訓練を行った。平成13年度は、まずヒトの色盲テストを模したテスト刺激による図形の弁別課題を用い行動実験を行った。行動実験はボゴール農科大学の研究者の協力を得て基本課題の訓練を行うとともに、テストの最終段階で現地に出向き(7月22-31日、3月21-28日)、2頭の色盲カニクイザルが表現型としてもヒトの色盲に匹敵する色覚を持っこと、比較のためにテストした通常の3色型の視物質遺伝子を持つカニクィザルは正常色覚を持っヒトの色覚に匹敵することを行動レベルで確認した。また、野外での色盲ザルの行動を調べる予備調査として、昨年度捕獲してマーキングしたキャリア1頭の生態調査を行ったが、正常なサルと行動上有意な差を認めなかった。一方、色盲ザルの生態観察を目的とした捕獲(2月17-28日)は、今年度は17頭(新規捕獲は7頭)に留まり色盲ザルの捕獲に到らなかった。昨年度まで予備調査を含め連続4年に渡り同じ捕獲手段(吹き矢)を用いたことが昨年度捕獲頭数の少なかった原因と総括し、今年度は1年半の冷却期間をおくとともに、別の手法(捕獲ネット)で再挑戦した。しかし、パンガンダランにおけるサルの頭数が昨年の170頭余から80頭余と急速に減少しており、多数の捕獲は困難であった。このため、色盲ザルの野外での行動観察は年度内に実施できなかった。
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