研究課題
基盤研究(A)
ヒトで約2%といわれる色盲はこれまで、マカカ属のサルでは報告がなかった。しかし本研究の申請者らの予備調査で、インドネシア、ジャワ島パンガンダランのカニクイザル血液から視物質遺伝子の異常が見つかった。平成11年度は、網膜電図による色盲判定の予備実験、生態学的な予備調査を行うとともに、ジャワ島パンガンダランにおいて73頭のカニクイザルを捕獲した。視物質遺伝子の解析の結果、色盲ザルと判定した2頭とキャリアと判定した3頭をボゴール農科大学に移送し、次年度以降の研究のために飼育を継続した。平成12年度は、前年度捕獲色盲ザルの網膜電図を記録し、色盲ザルで赤の感度が著しく低下していること、キャリアのサルは正常なサルと色盲ザルの中間値を取ることが明らかにした。また色盲判定の行動実験のため図形弁別課題の基礎訓練を行った。平成13年度は、まずヒトの色盲テストを模したテスト刺激による図形の弁別課題を用い行動実験を行った。行動実験はボゴール大学の研究者の協力を得て基本課題の訓練を行うとともに、テストの最終段階で現地に出向き2頭の色盲カニクイザルが表現型としてもヒトの色盲に匹敵する色覚を持つこと、比較のためにテストした通常の3色型の視物質遺伝子を持つカニクイザルは正常色覚を持つヒトの色覚に匹敵することを行動レベルで確認した。また、野外での色盲ザルの行動を調べる予備調査として、平成12年度に捕獲してマーキングしたキャリア1頭の生態調査を行ったが、正常なサルと行動上有意な差を認めなかった。一方、色盲ザルの生態観察を目的とした捕獲を、平成12年度、13年度に実施したがキャリアを捕獲したに留まり、色盲ザルの捕獲に到らなかった。このため、色盲ザルの野外での行動観察は年度内に実施できなかった。
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