研究課題/領域番号 |
11691194
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山倉 拓夫 大阪市立大学, 理学部, 教授 (10089956)
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研究分担者 |
原 正利 千葉中央博物館, 学芸員 (20250144)
神崎 護 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (70183291)
伊東 明 大阪市立大学, 理学部, 講師 (40274344)
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キーワード | 熱帯雨林 / 気象変 / 群集動態 / エルニーニョ / ラニーニャ / 大面積調査区 / マレーシア / タイ |
研究概要 |
地球規模の気象変動であるエルニーニョに伴う乾燥とラニーニャに伴う豪雨が熱帯雨林の群集動態に与える影響を明らかにする目的で、マレーシアおよびタイの森林で調査を行った。本年度の実績は次の通りである。1.マレーシアの低地熱帯雨林の大面積調査区内に出現する約35万本の樹木個体の死亡調査データを解析し、エルニーニョおよびラニーニャを含む期間の死亡率が平年の死亡率より有意に高くなることを明らかにした。また、乾燥によって、頂芽を含む先端部が一度枯損したのち再生する「ダイバック」現象が多くの林内幼樹で認められた。これは、主幹の傷害からの萌芽による回復過程が熱帯雨林樹木の更新に重要な役割を果たしていることを示す新しい知見である。2.小型稚樹への気象変動の影響のデータを得るため昨年度に開始した稚樹調査区の設定を完了した。サラワク大面積調査区内に1300個の2mx2m小調査区を設置し、胸高直径1cm以下の稚樹約4万個体に標識を取り付け樹高を計測した。3.気象変動が熱帯植物の開花・結実に及ぼす影響を推定するために、サラワクのイリッペナッツ輸出量と気象との関係を表す重回帰モデルを開発し、月当たり乾燥発生確率(サラワクの全測候所に占める月雨量100mm以下の少雨を記録した測候所の各月における割合)がイリッペナッツ輸出量と正の相関を持つことを明らかにした。なお、このモデルはこれまでに提案された同種のモデルの中で最も高い決定係数(R^2=0.6)を持つ。3.タイの山地林で継続してきた15ha調査区の種同定を完了した。主要な科であるブナ科、クスノキ科で種の分布と地形に密接な関係のあることが明らかになり、熱帯山地林でも土壌の乾燥が群集動態に影響を与えていることが示唆された。
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