全世界の人口の半数が感染しているH.pyloriの病原機序、感染者の人種背景の差による病型の差は未だに解明されていない。そこで本年度は、感染者の臨床材料と感染動物モデルを用いて以下の事実を明らかにした。 1.感染者、非感染者ともに胃粘膜にはT細胞の浸潤が最も多く、非感染者由来のT細胞でもIL-4に比較して大量のIFN-gammaを産生していることが判明した。 2.著明なIFN-gamma産生能は除菌により軽減する。 3.これらの知見に合致して感染者の抗体反応もTh1型のサブクラスが増加していた。 4.経口免疫でH.pyloriの感染防御を誘導するには唾液腺が重要な役割を担っている。 5.マレーシアにおける、中国系、インド系、マレー系の人々と日本人の間で、H.pyloriに対する感染率、と血清抗体が認識する抗原のプロフィールの差に付いて有意な所見を得た。これは人種により病型が異なることを示唆する所見である。
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