研究概要 |
H.pylori感染症は、日本単独でも6千万人以上、全世界で20億人以上の感染者が存在する。 H.pylori感染書に随伴した関連疾患に要する医療費も莫大である。 感染者全てが胃癌、胃十二指腸潰瘍、胃リンパ腫を発症するわけではなく、その病態形成メカニズムは依然不明である。感染者の発症・病型の差、羅患度に人種差が存在することが知られているが、感染菌株の遺伝子型の差、公衆衛生の差のみでは説明不可能である。感染宿主側にも発症・発病を決定する要因が推定される。H.pyloriによる、上部消化管疾患の病原機序、感染宿主の人種背景の差による臨床病型の差は未だに解明されていない。遺伝学的背景を異にする感染者を検討する必要が有るため疫学的事実、臨床データを国内外で調査・集積して共同研究を行うことを目的とした。 そこで、感染者の臨床材料と感染動物モデルを用いて以下の事実を明らかにした。 1,H.pyloriの感染によりおこる胃炎には宿主の粘膜免疫システムを構成する、唾液腺、腸管の免疫誘導組織が関与し、H.pyloriと粘膜上皮の産生するケモカインだけで肺炎の病理変化が説明できないことが判明した。 2,マレーシアにおける、中国系、インド系、マレー系の人々と日本人の間で、H.pyloriに対する感染率、と血清抗体が認識する抗原のプロフィールの差に付いて有意な所見を得た。これは人種により病型が異なることを示唆する所見である。 3,チェコスロバキアとの共同研究により、H.pyloriの感染の有無、胃癌の家族歴の有無、粘膜内に産生されるアンモニアの量、胃炎の程度の間に相関関係があるか否か検討した。
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