1996年以来腸炎ビブリオ新クローンによる感染症が頻発することを発見・報告した。この菌による感染症を、少なくともアジア8ヶ国と米国で確認し、我々の提案した世界的大流行(pandemic)という定義が採用されるようになった。最初O3:K6血清型を指標としたが、後にtoxR遺伝子を標的とした新クローンの同定法を確立した。このクローンからは徐々に派生型(O3:K6以外の血清型)が出現し、同様の経路で国際的に伝播していることも明らかにした。新クローンを1998年に世界で初めてタイ南部でアカガイから検出して以来、他の貝からも継続的に分離(O1:K25型を含む)し続けている。これらと患者分離株の間に強い相関関係が認められ、不十分に調理した貝類の接触によって感染が成立することが明らかで、国際的伝播の原因とも考えられる。またベトナムにおいては、衛生状態よりも高価な海産物を購入できる経済力が感染の重要な要因となっていることが示された。 マレーシアでは市販の新鮮魚介類が新型(O139型)コレラ菌によって高頻度で汚染していることを明らかにし、非汚染地域とされているこの国の水棲環境中に、この菌が高頻度で分布している可能性が示唆された。タイ南部でもテトラサイクリン耐性O1型コレラ菌による流行が初めておこったことを確認し、タイ南部-マレーシア地域における人の移動には注意すべきであると考えられる。 大腸菌O157は、インドからマレーシアに輸入される牛肉から高頻度で検出できた。またタイの市販牛肉や牛糞便にも本菌が分布していることも確認した。またマレーシアの環境中に、バンコマイシン耐性腸球菌やVibrio vulnificusが分布することも明らかにした。
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