研究課題
グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症は新生児黄疸の重要な原因と考えられている。しかし我が国ではその頻度は少なく、G6PD欠損症と新生児黄疸、特に核黄疸発生との分子レベルでの検討はなされていない。本研究は、G6PD欠損症が多発しているフィリピンで新生児黄疸特に核黄疸とG6PD欠損症との関連をその遺伝子の異常を基盤にして明らかにするものである。そのため、フィリピン総合病院をはじめ、メトロマニラ地区にある病院で出生した新生児を対象としてG6PD欠損症の新生児マススクリーニングを実施した。これまでに、約3万人の新生児を対象として実施し、人口の約3%がG6PD欠損症であることが判明してきた。G6PD欠損症は重篤な溶血発作を来たすが、こうした新生児スクリーニングで発見された症例の中で新生時期に重症な黄疸を来たし、核黄疸になった例は未だ発見されていない。ただ、G6PD欠損症と新生児重症黄疸との関連についての詳細な解析結果を待たないと結論は得られない。一方、G6PD欠損症の遺伝子診断については、私たちが確立したG6PD遺伝子の容易な遺伝子異常解析法を応用して発見されたすべてのG6PD欠損症症例で遺伝子の異常を明らかにしつつある。その中ではG6PD Viang chanの頻度が最も高く、フィリピンではこの遺伝子異常が優位なものと考えられた。しかし、未だ一部の症例ではG6PD活性の低下があるにも関わらずG6PD遺伝子の異常が明らかにされていない。今後、こうした症例の分子遺伝学的な解析がさらに必要である。
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