研究概要 |
動脈硬化の危険因子である高脂血症が、魚油やn-3系脂肪酸投与で改善されることが報告されているが、必ずしも一致した結論に達していない。ネパール人に高中性脂肪者が多くみられることから、高中性脂肪血症発症の栄養要因の探索及びn-3系脂肪酸投与の効果を検討した。 調査対象者の食物摂取状況は悪く、特に動物性蛋白質、魚介類の摂取が少なかった。高中性,脂肪者にn-3系脂肪酸(肝油)投与後、中性脂肪(TG)は167mg/100mlから95mg100mlへと減少した。総コレステロールとLDL-コレステロールが減少し、HDL-コレステロールは増加し、従って動脈硬化指数(LDL/HDL)は低下した。血清脂肪酸は、肝油投与後エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸は増加し、n-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)が72.9μg/mlから99.1μ9/mlへと増加した。脂肪酸組成の栄養状態を示すn-3/n-6多価不飽和脂肪酸比は肝油投与後0.081から0.100へと増加した。また、血清アミノ酸は肝油投与後総アミノ酸が増え、特に必須アミノ酸が増加した。このように、n-3系脂肪酸の投与によって、中性脂肪値が低下すると同時に血清アミノ酸組成が改善され、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸等のn-3系多価不飽和脂肪酸の栄養状態が改善されることが認められた。 これらの結果から、ネパール人に多発する高中性脂肪血症への栄養要因として、蛋白質摂取不足に由来する血清アミノ酸組成不良と、魚介類の摂取不足に由来する必須脂肪酸の不足、特にn-3系多価不飽和脂肪酸の不足が主たる栄養要因であることが判明し、n-3系脂肪酸投与がネパール人に多発する高中性脂肪血症の改善に有効であることが明かとなった。
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