研究概要 |
昨年度までの経験を踏まえ,新たに聴解教材とビデオ教材を準備し,コミュニケーション能力の育成を主目標とする実験授業(2001年10月17日〜10月26日・受講者49名)を行った。そして,実験授業の途中,並びに終了時に自由記述によるアンケート調査を実施した。その結果,中国人学習者の日本語学習時の学習態度・傾向に関して以下のことが確認された。 (1)中国人学習者が求める日本語の授業とは,思考力や想像力を刺激し,自ら考え自ら表現できるような練習や授業であり,また,活発に自分の意見を言い合える自由でリラックスした雰囲気の授業である。 (2)反対に中国人学習者が敬遠したいと考えているのは,単純な読解練習や文法練習,テキストの棒暗記,モデル会話などを繰り返すだけのペアワーク等,無味乾燥で面白みのない授業である。 (3)中国人学習者は実用的な(=実際に使える,現場で機能する)日本語の学習を望んでおり,クラスにおいても主体的かつ積極的に日本語を練習したいという希望を持っている。 これは,コミュニカティブな活動が不得意で,積極的に自分の意見を表現することが少なく,「話すこと」が苦手であるという日本国内における中国人学習者像と全く一致しない。そうした矛盾の起こる原因は,結局,自分の意見や考えを自由に表現したい気持ちはあっても,その表現方法が分からず,また,そのための練習を来日前に十分にしてきていないからであるという結論に達した。これは,即ち,学習者が積極的に自分の気持ちや考えを述べたくなるような教材やクラス活動を展開し,学習者が恐れることなく発言できる雰囲気作りに成功すれば,中国人学習者のコミュニケーション能力を十分に育成することができるということである。
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