今年度はネパールにおけるクマリ信仰の起源をカトマンズ盆地南のブンガマティ村に探るということで、資料の分類整理および調査計画の立案を行い、9月18日より27日までカトマンズに滞在し、大学院生らを中心に広く聞き込み調査を行った。その結果、ネパール固有の神格マチェンドラナートと処女神クマリとの間にかなり密接な関係があることを示唆するいくつかの伝承を見いだすことができた。また、マチェンドラナートがブンガマティ村ではカルナマヤと呼ばれ、インドにおけるアヴァロキテシュバラ(観音)の化身であることまで(仮説的にではあるが)突きとめることができた。このことはいつ観音信仰が起こったかという問題とも絡んで、仏教研究の分野においてもかなり重大な問題提起になるのではないかと思われる。また、これまで数度にわたるインドラジャトラ祭の調査を補強する上で、とりわけパタンにおけるラト・マチェンドラナート祭との比較研究を進める必要性を感じたが、それは来年度の4月から5月にかけての調査でまず簡単な見取り図を描くことから始めたいと思う。今年度はこれまでの研究をデータベース化することを中心に進められてきたが、今後はクマリ信仰のインドにおける残滓(カニヤークマリ)を探し求めるのと同時に、インドラジャトラ祭の特質をさらに詳細に分析することが大きな課題となるだろう。
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