この2年間の研究課題は、ネパールにおける処女神クマリ信仰の起源をカトマンズ盆地南のブンガマティ村に探るという一点に集約されるだろう。まずは資料の分類整理および調査計画の立案を行い、とりわけネパール固有の神格マチェンドラナートと処女神クマリとの間にかなり密接な関係があることを示唆するいくつかの伝承から、パタンにおけるラト・マチェンドラナートの祭りの調査に本格的に取りかかることになった。マチェンドラナートがブンガマティ村ではカルナマヤと呼ばれ、インドにおけるアヴァロキテシュバラ(観音)の化身であることまではこれまでにわかっていたが、平成11年度はさらに4月25日〜5月10日のインド・ネパール調査を経て、クマリ信仰のインドにおける残滓(カニヤークマリ)の研究にまで踏み込んで調査する機会をもった。このことはいつ観音信仰が起こったかという問題とも絡んで、仏教研究の分野においてかなり重大な問題提起になるのではないかと思われる。平成12年度はこれまでの研究をデータベース化することを中心に進められてきたが、さらに、2度にわたるインドネシア調査をもふまえて、処女神信仰の構造的特質をいくつかピックアップすることができた。このことは、これまで数度にわたるインドラジャトラ祭の調査を補強する上で、きわめて重要なことのように思われる。今後は2つの神格、インドラとマチェンドラナートの神話学的な比較研究を進める必要性を感じたが、それらを前提に調査資料のとりまとめを行っていきたいと思う。
|