研究課題
基盤研究(A)
伝統的な絵画、彫刻、建造物などの文化財に用いられている彩色文化財の技法と材料について、美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究と調査を行った。今年度は、7月から8月にかけて南ドイツ(バイエルン地方)の中世彩色木造彫刻をドイツ側研究者と共に調査した。調査を行ったのはバドトルツの近くの礼拝堂、エルバッハの修道院、バンツ修道院、巡礼者教会、ロットインの教会などにある彩色木彫像の他、バイエルン州立文化財研究所の修復工房、ミュンヘンのエルンスト修復工房、ノイバウエル修復工房、ツンハンマー修復工房などで彩色文化財の修復方法について実際の修復作品を前に討議を行った。また8月にはフランスの洞窟壁画の彩色技法について調査を行い、建造物彩色については12月にマイセン、ヴィースバーダンなどで調査を行った。ドイツ側研究者は日光東照宮、滋賀県の西明寺、京都の西本願寺、奈良の浄瑠璃寺などの彩色文化財の調査を3月に行った。併せて東京の明珍修復工房、京都国立博物館の修理所などを訪問し、日本の修復技術者と共に討議を行った。また日本の古墳壁画の彩色についてフランス研究者が12月に来日し、日本側研究者と研究討議を行った。この他、我が国の文化財については試料採取が困難なために、現場で試料を採取しないでそのまま顔料分析できるようポータブル蛍光X線装置を開発したが、その装置の性能について実験室で試験を行い、コリメータで絞って照射面でφ2mm程度のX線ビームにしても主要元素については十分な分析精度がでることを確認し、この研究成果を日本文化財科学会で発表した。またこの研究の成果を徳川美術館との源氏物語絵巻物の共同研究に生かして成果を得ることができた。
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