研究課題
伝統的な絵画、彫刻、建造物などの文化財に用いられている彩色文化財の技法と材料について、美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究と調査を行った。今年度は、まず日本側だけで予備的にポータブル蛍光X線装置を用いて、三重県の四日市立博物館と東京芸術大学で彩色彫刻の顔料分析を行い、装置の性能について実地試験を行った。その上で8月に南ドイツ(バイエルン地方)を訪れ、中世彩色木造彫刻をドイツ側研究者と共に調査した。調査を行ったのはニュルンベルグの聖ローレンス教会、アンスバッハのマルグレーブ辺境侯の館、ローテンブルグの聖ヤコブ教会、ネルトリンゲンの聖ゲオルグ教会、そのほかバイアバッハ教会、聖アンナ教会、アルトミュンスター教会、オットーボイレン教会などである。それぞれ彩色木彫像の修復現場を訪れて、ドイツの修復技術者と材料や技法について討議と調査を行った。またバイエルン州立文化財研究所の修復工房で、顕微鏡を利用した試料のサンプリングとクロスセクションの作成など、科学的調査方法の実際について、修復中の彩色彫刻を用いて意見と技術交換を行った。また最終年度の報告書の作成について、どのような内容と形式にするか打ち合わせた。ドイツ側研究者は10月から11月にかけて来日し、神奈川県立金沢文庫、永勝寺、鎌倉国宝館、静嘉堂文庫美術館、京都国立博物館、琵琶湖文化館、石山寺などの彩色文化財を、ポータブル蛍光X線装置やドイツから持参したポータブル顕微鏡を用いて調査した。併せて東京の明珍修復工房を訪問し、日本の修復技術者と共に討議を行った。研究成果を各種論文誌に発表すると共に、12月には科学的調査法に関する研究会を開催した。
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