研究課題
伝統的な絵画、彫刻、建造物などの文化財に用いられている彩色文化財の技法と材料について、美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究と調査を行った。今年度は、7月から8月にかけて南ドイツ(バイエルン地方)の中世彩色木造彫刻をドイツ側研究者と共に調査した。調査を行ったのはアルトミュンスターの聖アルト修道院、オツトーボイレンの修道院、バイアバッハの聖母教会、ロットアムインの教会、エリングアムインの聖アンナ教会などである。アイヒシュテッテンのクレマー絵具工場では古くから彩色に用いられている種々の顔料について調査した。中でもスマルトと呼ばれる青色の顔料は含まれる微量成分によって黄色から緑色まで変化した色味が得られることや、今回の研究を通じて我が国でも使用されている可能性が大きくなった緑土(テールヴェルト)の製法などについて新しい知見が得られた。また8月3-4日にはバイエルン州立文化財研究所で日独の歴史的彩色技法についてシンポジウムを開催し、博物館、美術館から80名以上の参加者があった。さらにボンではドイツ連邦政府の担当者と今後の研究の進め方について会議を行った。ドイツ側研究者は11月から12月にかけて来日し、東京の明珍修復工房、放光堂(絵具製作)、切金工房で彩色技法についての調査を行うとともに、知恩院、平等院、奈良国立博物館、東大寺などで彩色文化財を調査した。また12月1日にはドイツ側研究者を含む85名あまりの参加者を得て、日独の彩色文化財について共同研究会を開催した。この他、ポータブル蛍光X線装置を用いて、絵巻物など国内の彩色文化財の顔料測定を行い、修復や模写のために利用した。
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