研究概要 |
▽第1年度は,国際科研から移行した基盤研究として,研究パートナーである東北財経大学(中国:大連)との共同調査を柱とした。計画経済期の中国経済を重工業基地として支えた中国東北部(遼寧,吉林,黒龍江三省)は,市場経済への移行期・産業構造の転換期にあって国有企業改革など大きな難題を抱えている。これは,元来,国有経済の基盤が相対的に弱く,移行期に目覚しい市場的発展を遂げている華南,華東地域と際立った対照をなす点である。本研究は,このような歴史的に形成された状況を正確に把握する中で,東北地域の市場的発展を促進するとともに国有企業改革をスムーズに進めるキーポイントが中小企業の発展にあると想定して進められている。▽東北財経大学のチームの訪日調査にあたっては,共同研究の基礎として,日本の中小企業政策・中小企業金融の実体を包括的,かつ正確に理解してもらうことを主眼とした。10月に招聘した東北財経大学チーム(中国から2名,日本滞在中の者2名)は,日中共同研究会で「東北経済論」をレクチュアし,日本側に理解を求めるとともに資料を提供した。また,中小企業統合事業団(日本の中小企業政策)中小企業国際センター(日本の中小企業金融),大阪府産業開発研究所(関西経済と中小企業)でレクチュアを受けるとともに,神奈川県金沢工業団地や大阪の大・中小企業を調査した。▽日本チーム(科研補助金使用2名,その他費用使用3名)は11月に大連の東北財経大学を訪問し,同大学邱学長を含む座談会など研究交流を深めるとともに,市政府経済研究センター,計画委員会,環境保護局など経済官庁,工商銀行で諸政策のレクチュアを受け,大連市と瓦房店市の国有企業,中小企業を実地調査した。とくに私営・個人企業が中核となる工商業聯合会との交流では,中国の中小企業実態研究の手がかりを得た。工商業聯合会は政府の支持予算のもとに中小企業振興のための環境整備,経営者・人材育成,融資促進,外資協力に努めており,その役割は大きい。
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