研究分担者 |
中野 聡 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 助教授 (00227852)
大芝 亮 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50168910)
村上 勇介 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (70290921)
寺地 功次 共立女子大学, 国際文化学部, 助教授 (60217429)
西崎 文子 成蹊大学, 法学部, 教授 (60237691)
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研究概要 |
本共同研究では、一つの柱として協力を得たラトガース大学と日本側の双方で6回のワークショップを開催し、日米のナショナリズムと市民像の事例を比較する報告および討議を重ねた。報告はNationalism and Citizenship I, II, III, and IV(Osaka : JCAS,2000 and 2001)として刊行している。もう一つの柱としては、各分担者のテーマに沿った現地調査で、3年間の調査記録は報告冊子としてまとめている。並行して進められた二つの研究活動を総合して13年11月に地域研究企画交流センターの国際シンポジウムと合同する形で、各分担者が論文報告をおこなった。 日米のナショナリズムを歴史的に、政治的に分析していく作業の中から、双方の背景は異なるものの、国際政治における冷戦終結と急速に進むグローバル化の影響が、両国の国内社会に共通する課題を呈示することが明らかになった。政治的共同体の統合をどう維持するか、マイノリティに限らず個人が政治に持つ意義が希薄化している状況をどう再活性化するかについて、日米の社会の対応を法制度、エスニック集団の活動、NGO/NPOを含む市民社会組織の事例から比較分析した。これはヨーロッパも含め世界中が経験している「内なるグローバル化」の問題全般に応用できる研究成果である。9・11テロは、アメリカを包み込むナショナリズムの高揚を引き起こし、また日本の教科書をめぐる確執は確信犯的にナショナリズムを利用しようとした。グローバル化とナショナリズムの高揚とは二律背反しないという本研究の基本的認識が確認された。また、ナショナリズムは国内社会の土台をなすような価値観を対外的に投影することでさらに強化されるという過程も、事例研究や現在進行形の日米の状況から明らかとなった。 3年間の研究成果はRyo Oshiba, Edward Rhodes, and Chieko Kitagawa Otsuru, eds., "We the People" in the Global Age (Osaka : JCAS,2002)として編集中で、別途日本語での出版作業も進めている。
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