地球環境問題との関連から、反応速度素過程の本質的理解に基づいた大気化学、燃焼化学、さらには凝縮系、表面相反応化学の設計、制御が急務である。反応速度素過程は基本的には量子トンネル、量子非断熱遷移など様々な量子現象が関与した量子速度過程である。本共同研究では反応速度素過程を時間に依存した量子力学的動的過程としてとらえ、量子波束法、経路積分法を駆使し、量子力学的に精密な反応速度定数の理論的評価法を開発確立することを目的とする。本国際共同研究の成功により、量子速度過程の詳細が明らかになり、反応速度素過程の基礎的データの蓄積により大気反応、燃焼反応の制御への指針を与えうると考える。特に具体的応用として、オゾンを中心とした大気光反応を量子論的に取扱い、オゾン濃度の高度分布異常性など地球環境と関連した重要な問題の解析をめざした。 初年度はまず新しい方法論の検討を行った。 (1)量子力学的速度定数の流束相関関数を用いた方法論の実時間経路積分法による定式化、さらに時間発展演算子の半古典論による近似的解法の開発について、初期値表現による記述が可能であることがわかった(Miller、山下)また(2)オゾン分解過程の大気光反応に関して非断熱過程が重要な寄与をすることを明らかにするためにポテンシャル面と非断熱結合の量子化学計算を行なった。(Leforestier、山下、中島)。
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