研究課題/領域番号 |
11694073
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
百瀬 孝昌 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10200354)
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研究分担者 |
若林 知成 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30273428)
志田 忠正 京都大学, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (60025484)
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キーワード | 固体水素 / 量子固体 / レーザー分光 / 赤外分光 / 高分解能分光 / 放射線 / 分子イオン / シュタルク分光 |
研究概要 |
本研究は、これまで不可能であるとされてきた凝縮系における高分解能分光が唯一可能な、最も簡単な分子の結晶である固体水素及びその関連物質を分光学的に研究し、これまで実験的手法がないために曖昧にされてきた原子・分子集団系固有の多体相互作用や励起状態の緩和過程などを定量的に明らかにするとともに、凝縮系水素が関連する様々な物理・化学を明らかにすることを目的としている。そのために固体水素の分光研究において世界の最先端をゆく京都大学とシカゴ大学のグループが密に連絡を取り合いながら研究を進めている。本年度は特に放射線照射した固体水素の赤外高分解能分光を行った。その結果、生成するイオン種の電場によって誘起される、イオンの近くの水素分子の振動遷移が非常に鋭い(半値幅約60MHz)という驚くべき事実を確認した。さらに電場によってシュタルクシフトした遷移周波数が結晶ごとで非常に再現性がよく、生成したイオンが化学的に安定で、さらに周りの結晶構造もひずみのないものであることが明らかとなった。スペクトルの解析の結果、これをH_3^+(H_2)_nによるものと同定し、イオンクラスター内の水素の振動遷移としてすべてが説明できることを明らかにした。さらに、固体中に微量のメタンをドープして放射線照射することにより、メタンの水素付加陽イオン(CH_5^+)の生成を試みた。陽イオン分子は宇宙空間における分子進化の鍵を握るものとして、またプラズマプロセス、有機化学、燃焼化学など広い分野において重要な中間体として予想されており、多くの研究者の関心を集めている。本年度は、陽イオンの直接観測はできなかったが、陽イオンによって新たに誘起された水素の振動遷移を観測することができ、陽イオンの数密度を求めることができた。
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