研究課題/領域番号 |
11694080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野呂 哲夫 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (30164750)
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研究分担者 |
若狭 智嗣 大阪大学, 核物理研究センター, 助手 (10311771)
坂口 治隆 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30025465)
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
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キーワード | 準弾性散乱 / 媒質効果 / 偏極 / 磁気スペクトロメータ / 原子核反応 / ハドロン / カイラル対称性 / 相対論的効果 |
研究概要 |
核内でハドロン(陽子・中性子の核子や中間子)の質量が減少していることが、QCD(量子色力学)やQHD(量子ハドロン力学)の枠組みで理論的に予想されている。一方、核子間に働く核力は中間子交換力としてよく説明できるため、原子核内での核子-核子散乱である準弾性散乱[(p,2p)反応]を測定することにより、この効果を調べることが期待できる。 本研究では、ペテルスブルグ原子核研究所(ロシア)の1GeV陽子ビームを用い、(p,2p)反応に関する偏極量Pを測定した。この反応では、反応点の平均核密度を歪曲波インパルス近似によって見積もることができるため、いくつかの標的核によるデータから核力の核密度依存性が容易に引き出せるという大きな利点がある。^1H、^6Li、^<12>C、^<40>Ca原子核を標的としての結果は、Pが核密度に単調に減少し、平均核密度が飽和核密度の約1/3となる^<12>C標的の場合では、自由空間での値に比べ半減していることがわかった。 Dirac相対論を現象的に取り入れた理論によって評価したところ、この実験的に得られたPの減少の50-60%が核内で陽子質量が減少する効果として説明できるとの結果を得た。これらのことは、われわれのグループによる400MeVでの結果と一致している。エネルギーの大きく異なるこれらふたつの実験で同様の結果が得られたことは、このPの減少が、歪曲効果や反応機構によるものではなく、原子核の内部構造に根ざした核力の変化に起因することを示しており、核内でのハドロン質量の変化を強く示唆するものである。
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